壬生狂言2

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 今度は、『紅葉狩り』です。
このストーリーは入り組んでいるので、次の本から引用してみます。さすが梅原氏はこのうえなく簡潔にまとめておられます。(『壬生狂言の魅力』梅原猛・西川照子著、平成9年、淡交社)

「威風堂々たる美女、侍女を従えて現われ、「紅葉狩り」。そこへ鹿狩りにきた平維茂(たいらのこれもち)。美女は維茂とともに「紅葉狩」を楽しもうと盃を差し出す。酒宴。維茂の従者も下女に酌をしてもらい、いい気分。ところが、この酒、毒が仕込まれていた。維茂は気分がすぐれず、眠る。従者の方は眠るいい気なもので、侍女に誘惑され、姿を消す。寝入った維茂に近付く美女。実は信州は戸隠山の鬼女。美女は維茂の大小・弓矢を奪って、一旦、消える。寝っている維茂の夢に、地蔵、現われ、美女が実は鬼であることを知らせ、太刀を与える。この地蔵にもらった太刀で維茂、鬼と化し、再び姿を現わした"美女"を刺し殺す。鬼女は断末魔、依代の紅葉を食いちぎる。維茂、鬼女の首級を取る。」


美女現れる。



維茂の殺陣(??)。



維茂、鬼女を刺す。鬼女は紅葉を食いちぎる。



鬼女の首級をとって得意げな維茂。

 ここに上げた演目のほかに、奉納された炮烙(ほうらく。素焼きの皿状のもの)を、舞台の端に堆く積み上げ、それを豪快に落として割っていって、厄を落とすという『炮烙割り』。これは見ている方も胸がスキッとします。

 また、源頼光の玄孫にあたる源頼政が御所に夜ごと出没する妖怪を退治する『鵺(ヌエ)』(この曲ではヌエ役が綱渡りを見せる)など。数えあげればきりがないほど面白い演目があります。

                       

永き日を云わで暮るゝや壬生念佛』 蕪村
 後半生を京都の烏丸あたりに住んでいた蕪村は上のような俳句を残しています。春の日の、のどかな雰囲気と、狂言が無言劇であることを掛けていると考えられます。蕪村もこの壬生狂言の舞台を見物したのでしょう。周辺の状況は大きく変っても、舞台そのものはあまり変ってはいないだろうということを考えると、ある感慨が涌いてきます。

このページを作っていると、また壬生狂言に出掛けていきたくなりました。

                       


 なお、このページに掲載した写真は、私が80年代初期に撮影したものを、このほどスキャナで取り込んだものです。画質はよくありませんが、自分でもけっこう気に入っているものです。また、そんなわけで最近の状況と違っている可能性があることをお断りしておきます。もっとも、演目の内容は変わっていないはずと思いますが。

《参考文献》
・『壬生狂言の魅力』梅原猛・西川照子著、淡交社、平成9年。
・『ハンディ鑑賞ガイド壬生狂言』壬生寺編、淡交社、平成12年。

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