忍者の技は永遠に

-太秦映画村・驚異の世界-

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 この三月に、太秦(うずまさ)映画村に出掛けました。ここはもと東映の撮影所があったところで、今では映画についてのテーマパークになっているのです。村の中は、時代劇のセットを中心にした町並みができていて、さながら江戸の下町にタイムスリップしたようです。

 この日は幸運なことに、二本の時代劇の撮影があるということでした。上は、高島政伸の出演する「三匹が斬る」というTVドラマを飯屋のセットで撮影しているところ。

日本橋のたもとには、お侍さまが見回っていて、我々下じもの者に目を光らせています。
 ところがどうしたことでしょう。江戸町の蔵屋敷の立ち並ぶ掘割りに、ななッ何と、突然怪獣がヌッと! しかも子連れの怪獣です。あまりの出来事に、寺子屋から出てきた、はな垂れ小僧も飛び上がっています。

 しかしかくも異様でシュールな光景に、小僧を除いた周囲はまったく平静でいるのには、私も少なからず、感動を覚えたのでした。
 また近くに江戸の芝居小屋もあり、そこでは何と「がまの油売り」の実演をしていました。しかもこのがまの油は、自分のではなく、客の腕を切るといういかがわしさ。

上の写真は、そのクライマックス。このおじさん、どこかで見たことがあると思ったら、やはり時代劇の悪役として色々な所に出ておられるようです。

 芝居小屋のロビーには、昔なつかし時代劇のポスターがずらりと飾ってあります。私の知らない映画もたくさんありました。
 次は代官屋敷。大岡越前さまのお白州が再現してあります。なぜか代官屋敷のかたわらの牢屋には、眼光鋭く光るさらし首が三つ。何かを訴えかけているようで、身につまされます。

 また遊郭の町並みもあります。京都なんだから島原かと思いきや、この遊郭は吉原のようでした。その中の一軒には重い病気なのか、青白い顔をした太夫が物思いに耽っているのでした。身あげされることを夢見てでもいるのでしょうか。

この映画村には江戸時代のセットばかりでなく、昭和30年代の裏町を再現したコーナーもありました。

 こんな看板には、なつかしさでホオ擦りしたくなります。駄菓子屋では、駄菓子もちゃんと再現してありましたが、残念ながら食べることはできません。

タバコ屋のこんな風情も、今はもう望むべくもありません。左端に写っている赤電話さえ、今ではもうないのですから。
 また、映画記念館なるものがあり、ここでは本格的に映画に関する資料が展示されていました。往年のスターや名監督たちの写真や資料が豊富に展示してあり、なかなか勉強になります。

上の写真は、左から三島由紀夫、五社英雄監督、勝新のめずらしいスリーショット。
 屋内のスタジオでは、ガラス越しに上から撮影風景が覗けるようになっていました。そこではもう一つの時代劇「水戸黄門」の撮影が佳境に入っていて、石坂浩二が水戸黄門に扮して、威厳たっぷりに八時四十三分ころの演技をしていました。
 たっぷり楽しんで建物から出ると、頭上を黒い物がスッと動くのです。一瞬カラスに襲われたかと思って、首をすくめました。よく見ると、ななっ何と忍者が綱を渡って、お城に忍び込もうとしているではありませんか。思わずカンバレ!と声をかけたくなります。

 それにしてもこの忍者、ちょっと目立ち過ぎ、という感なきにしもあらずです。でもとても根気のいい忍者と見えて、私が見ている間ずっと、そしてこれからも永遠に、綱を渡る往復運動をつづけるのです。

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 この日は、とても楽しく、また有意義な一日でした。みなさんも、一度は永遠の忍者の仕事ぶりを見に、映画村にお出掛けになりませんか?

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