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ますぐなるもの地面に生え、
するどき青きもの地面に生え、
凍れる冬をつらぬきて、
そのみどり葉光る朝の空路に、
なみだたれ、
なみだをたれ、
いまはや懺悔をはれる肩の上より、
けぶれる竹の根はひろごり、
するどき青きもの地面に生え。

 萩原朔太郎のこの詩は、高校時代の国語の教科書で出会いました。というと条件反射的に、この詩を思いだしてしまうのです。私と同年代の方々は、同じ体験をされているかも知れません。ちなみにその教科書は、筑摩書房のものだったと記憶しています。
 昔、同じ大学の友人と夜に歩いていて、空に火星が見えていたことがありました。私が「火星が出ている・・・」と言うと、「高村光太郎か」とその友人が言うのです。私は骨の髄まで散文的な、そいつがこんな知識をもっていることにびっくりしました。なぜこんな詩を知っているのか、と尋ねてみると、数年前の私たちの大学の国語の入試問題にこの高村光太郎の詩が出ていて、過去問を丹念に勉強したはずの同級の学生の中では、知らぬもののない詩だったのです。
 結局、「俺たちの教養なんて、そんなもんさ」という落ちがついたのでした。
この「竹」の詩も、これに類したものかも知れませんが、イメージの鮮烈さは、今でも心を貫きます。

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