私の愛するカルマン渦
皆さんはカルマン渦というものをご存じでしょうか。 液体や気体が流れているとき、ある条件を満たしていると、障害物の下流に左右交互に反対回りの渦の列ができるというものです。物理学の教科書にときどき出ているのですが、私はこれがたまらなく好きなのです。何とかしてこのカルマン渦の画像を撮りたいと思っていましたが、なかなかその機会がありませんでした。波が立たずに滑らかな流れが必要で、これがあまりないのです。
ところが先日、上賀茂神社にいったときこの条件に合う流れがあったのです。ここは葵祭の斎王代が禊ぎをする御物忌川(おものいがわ)。よく見ると、あるある落ち葉の下流にこのカルマン渦ができているのです。
ところで、意外なところでこのカルマン渦が見えます。毎年冬の季節、TVの天気予報のひまわり映像に現れるのです。普通は韓国・済州島の下流の東シナ海に出現するのです。
この画像はひまわりではなく、ランドサットのものですが、ここでは珍しく屋久島の宮之浦岳の下流にみごとなカルマン渦が見られます。尚、この画像に写った東シナ海の土色のものは、中国大陸からの黄砂なのです。
そこで、NASAのホームページでカルマン渦の画像を検索したところ、みごとな渦が出てきました。上のものは南米チリの沖にある島の下流にできたみごとな渦列です。
さらに考えると、木星表面の渦列もカルマン渦に良く似たものであることに気づきます。右上は大赤点で、その下は大白点。その周囲に木星の大気の流れによる複雑な渦模様が美しく浮き出ています。
このように、水や気体の流れによるパターン模様は、小は落ち葉の下流にできる1m程度の大きさから、屋久島の下流の100km規模のカルマン渦、そして木星の大気の流れ模様は、大赤点が地球規模の大きさなので10,000kmの規模でも見られる現象なのです。つまり10の7乗もスケールが違っても、似たようなパターンが見られるような現象は、他にあまりないのではないでしょうか。
私がこのカルマン渦を愛するのは、その美しさと、この不思議さからなのです。そして私の夢は、このカルマン渦を東シナ海に出て、下から眺めることです。こんな素晴らしい渦は、海上からどのように見えるのでしょうか。考えるだけでワクワクしてくるのです。