上賀茂神社・競馬(くらべうま)1
上賀茂神社の神馬
毎年五月五日の日には、上賀茂神社で「競馬(くらべうま)」の行事が行われます。この競べ馬は葵祭と関連して、平安時代の末期から千年以上もの歴史があるそうです。上賀茂神社の神域は、広々とした芝生に木々が散在して、この季節は、若葉に包まれてとてもすがすがしいものです。この芝生に馬場のコースがしつらえられ、「埒(らち)」と呼ばれる、木の枝で作られた柵で区切られます。このコースは400メートルぐらいはあるでしょうか。
審判役
「競べ馬」には、お昼ごろから見物人が集まりはじめ、芝生の上で三々五々弁当を食べたりしています。見物人にすると早く見たいの一心ですが、毎年決まっておじいさんの解説が延々と続き、二時半ごろになって、ようやく始まります。もっともこの間には、公開されていない行事が行われているということですが。この解説によると、吉田兼好の「徒然草」の中にすでにこの祭りの話しが見えているということです。こんなところも私は好きなのです。(2)で「徒然草」に当たってみることにしましょう。
乗り切り
さて、競べ馬は赤組と黒組の二頭の馬で競います。コースには、目印となる木が生えています。例えば、「馬出しの桜」とか、「見返りの桐」とか、「勝負の楓」といった具合です。勝負は、合わせて五番行われます。
りりしい騎手(乗り尻と呼ばれる)
まず「乗り切り」といって、馬場の中を何度も行ったり来たりして、馬を慣らし、その後赤と黒の呼吸が合ったときに、スタートするのです。「見返りの桐」のところでは、第一の組の赤の騎手は、独特の所作で後ろを振り返るということをするのです。
呼吸が合ってスタートすると、二頭の馬は素晴らしい勢いで目の前を駆け抜け、またたく間にゴールに突進します。
こんなに間近かに馬が疾走するのを見る経験は、他にありません。でも考えてみると、昔はこれほどの迫力ではなかったでしょう。昔の馬は日本産の小型の馬だったはずで、現在のサラブレッドと、そのスピードや迫力は及ぶべくもなかったでしょうから。その意味で見物人も一種命がけのところがあるのです。じっさい今年は、馬の蹄鉄が疾走中に外れて、見物人を直撃しケガ人がでたのです(命には別条なかったのですが)。
戦いが終わって、勝利のあいさつに回るところです。行事には、こまごまとした仕来りがあるようで、私には十分に理解できていません。