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私がこの「アンチゴーヌ」に出会ったのは、大学の二年生の時でした。フランス語の講読の時間にテキストとして取り上げられたのでした。その講読では、一年間に四分の一位しか進まなかったのですが、私はすっかり魅了され、自分で全部訳してみました。その後二三年たって、改めて自分なりの決定稿を作り、原稿用紙に清書して、大事にしまっておいたものです。しかしその後二十年以上の時間が流れ、幾度かの引っ越しを経たためか、その原稿を紛失してしまったのでした。
最近になって、偶然にもインターネットでこの「アンチゴーヌ」の原文が公開されていることを発見して、また訳さずにいられない衝動にかられたのでした。読んでいると、二十年という時間を感じさせず、夢中になってしまいました。しかしふと我れに帰ると、かつてはすべてに「ノン」と言うアンチゴーヌに、より多く共感を寄せていた自分が、知らぬ間にクレオンにより共感していることを発見していました。それどころか、体型も立場も全くクレオンで、聞き分けのない自分の子供たちをしかるのにも、ほとんど同じような内容を話しているのに、我ながらびっくりしてしまいす。
なおこの戯曲は、フランスがナチスに占領されていた1944年に初めて発表され、ナチスとその傀儡政府であるペタン政権に対するレジスタンス運動の象徴として、絶賛をもって迎えられたということは知っておいてよいと思います。
また残念なことに、この十年以上にもわたって、一般人にとっては日本語でこの名作を読むことがほとんどできない状況が続いていました。このホームページを訪れていただく方だけでも、この名作を読んでいただきたいと思ったのも、このページを作った動機なのです。ページは便宜上二つに分けましたが、テキストでは一続きであることをおことわりしておきます。感想などお寄せいただくとうれしいです。
ではどうぞ、私の偏愛するこの名作を楽しんでください。